大理石を彫る

透過する形

『透過する光線』を彫った頃に比べたら、今はかなり自由になった。思い浮かんだものを疑わずすぐにとりかかる。まず石の上にいちばん好きな色で描いてみる。その線が生き生きとして見えたならば、そのイメージは必ず形に出来る。今夜は風と水を重ねて彫った。ケルビムの輪がブンブン回ると、水は喜び波立ち白い泡が笑う。

昼間はガハクの油絵を入れる為の額を4つ製材した。すぐに接着され組み立てられた白木のままの額の中に入った絵がとても美しかった。少しずつ実現している世界がここにある。(K)

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雲と雨と光

やっとトワンの背中の羽が美しく彫れた。今夜、海の上に浮かぶ雲を一つ増やした。この小さく可愛らしい形が気に入っている。どんどん削り落としてそぎ落としているのに、増えて加えられることもあるのだ。まったく予想していない時に思いもつかぬ場所にぴょんと浮かぶ形がある。それをそのまま素直に刻むときっと楽しいものが出来る。それはほんとうに小さな存在だけれど必ず全体によい影響を及ぼす。そしてそれはずっと変わらず可愛らしく美しい形をしている。春には春の、冬には冬の出現があるのだ。(K)

Dscf7240

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物語を削り落とす

川を削り落としたら女の手が自由になった。示唆と暗示は消えた。ふわっふわっと空から降りるとき、髪は緩やかに揺れ、手は空気を抑えるためにわずかに丸みを持つだろう。少し彫り直した。

春はいい。冬を越えたものたちが振り出しに戻るわけじゃない。去年より大きな枝に大きな花と大きな葉を付けて鮮やかに雨に濡れている。物語はシンプルに。造形美が先行する。(K)

Dscf7211

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春に彫る

新緑の美しさに毎日うっとりしながら自転車を走らせている。刻々と動いている山の緑と庭の梢。今年はリンゴが去年の数倍花を付けた。これはすごいことなんだ。死にそうだったあの木が枝いっぱいに花を咲かせるなんて、数年前は考えられないことだった。

今日は決意した。リンゴの木の再生を皮切りにして、未完成のままに放ってあった彫刻を一つ一つ作り上げて行こうと。その仕事が終わるまでは死なないでいられるだろう。いや、気がつかないまま向こうに行っているかもしれない。

雨は斜めにすると雨らしくなる。そこに風があるということだ。桜もだけど、雨も風と仲良しなのだ。(K)

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水脈

水の流れをなんども彫り直しながら探っていたら、突然閃いた。遠望した森の中にキラッと光る幻の滝の形が見えた。ブツッと切れる水脈はどこに行ったのか?そんなことは構わない。表に現れたものを彫るだけだ。霊的継承を表象するように水は地下に潜ってどこからかじわっと溢れ出す。失くなることは決してないのだ。(K)

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樹海の中の道

長い間放置されて荒れ放題の山の中にもぽっかり開けた場所がある。日当たりが良い庭園のようだ。そこから森に入る道がある。

昔そこが鉱山だった頃に作られた広い道で、ところどころに人工的な排水路や水を送り込むのに使っていたらしい鉄製のパイプラインが草むらに露出していたりする。

鬱蒼とした森を左右に分けるくっきりした影は、人が作った道がその下にあることを示している。動物が歩く道にはそんな影は出来ない。遠くから樹海を眺めると、山の上の方へ、光の方へと続く道がはっきりと見える。そういう道を森を彫りながら作っている。(K)

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滝不動

今夜は女の髪と川を彫った。二つの帯は動きが真反対だが、ひとつながりのように見える。

このイメージには裏山の滝がある。梅雨時にだけ出現する小さな滝だけれど、傍の岩には線彫りの不動明王が彫られている。そんなに古いものでもなさそうだが線に媚がなくて好きだ。不動明王は悪魔を下し、仏道に導き難い者を畏怖せしめ、煩悩を打ち砕くのだそうだ。彼女の意思を目から読み取る。(K)

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空に月あり

水の中の月がうまく彫れたので、空の月も彫り直しにかかった。月が球体であるというのは誰かに教えられたことで、それより前に見た最初の月はもっと大きくてずっと美しかった。坂の上に出て来た月を今も覚えている。

月に照らされて山からゆらゆらと立ち昇るものが見える。狭い谷から水蒸気が上がっているのだ。今夜は春の満月だ。(K)

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膨らむ海

水を彫るのが面白い。透き通った水の色、泡立つ波。今夜は水平線から僅かに離れて浮かんでいる雲を彫った。光が斜めに雲を切った。本当は雲より光の方が強いのだ。ただ、人間は剥き出しの光には耐えられないので雲で和らげられて地上に届いているのだそうな。

今日はアトリエの畑に新しいネットをかけた。だいぶボロボロになっていたのだ。雪の重さで破れ、猿に破られ、猪に突進されボロボロで継ぎ接ぎだらけだったのが、すっかり立派になった。

陽を受けてじりじり膨らむ海のように、ゆっくりだが確実に船は進んでいる。(K)

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月の住処

月は自分に相応しい場所を知っているようだ。今日はピアノと奔流の間の溝を深くするところから始めた。すると流れは向きを変え再び山の後ろに回った。激流がなだれ込んでいた海は急に静かな湖水になり、月は光りながら水底まで降りた。月の住処はここに決定だ。(K)

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