わが師
アトリエの本棚にある駒井哲郎「銅版画のマチエール」を時々開く。技法の手引書にとどまらず氏の銅版画に対する考え方が書かれていて非常に興味深い書だ。子供の頃に銅版画に出会い一生を銅版画制作にかけた一種の憑かれた人でもある。文章も味わい深い。
僕が大学に入学したての頃、仲間とどこかソリが合わずただ一人デッサンしていた部屋に来られ技術指導をしてくれた。その時どうして皆と一緒の場所で描かないのかと言われた。
その頃の僕は版画というもの自体にほとんど興味がなく氏の存在も近いものではなかった。そして銅版画を始めた時には既にこの世の人ではなくなっていた。今では遠い過去を思うようにしてわが師と読んでもいいかなと思える。
本の中に右手がすっかり疲れたと書いてある。銅版画のインクの拭き取りの事だ。今日は確かに拭き取りで右手の疲れを感じた。(画)
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