鳥の歌

描いた絵の意味を尋ねられて「鳥に歌っている意味を尋ねますか?」と答えたピカソは、自分は歌うように絵を描いているのだと主張している事になる。しかし彼の絵描きとしての一生は、自らのアカデミズムと対立しそれを超えようとし続けたものだ。晩年の子供の落書きのような絵でさえ(反)アカデミズムの匂いを感じる。ボナールを愛好していたジローに、絵というものは男性的なもので行き当たりばったりに制作する女性的なボナールの絵は劣ったものだと言ったという所にも、「鳥のように歌えない」アカデミストの鎧に覆われた精神を感じてしまう。(画)
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後ろ姿

女の子の背中のリボンを彫り直した。適当な方向を向いていたのをぴたっと体に付けたのだ。髪の毛もフサフサにした。トワンの尻尾が彼女の腰に触れている。この3人の後ろ姿をもっと美しく彫りたいと思った。あまり目立たない場所にこそ作者の気持ちが宿っているというのは本当だ。楽屋裏の悲しさは、ステージに上がったことがある人なら知っている。一番楽しい場所が何処にあるか分かるのはステージを降りてからなんだ。(K)

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妖艶なる純愛

彼は純粋な魂を持った人なのだから異性への恋は純愛なのだ。しかしその恋は今のところ全く無意識なものだ。さらにその対象である女性は未だ幼い形をしている。しかし彼らの間に立つガジュマルの樹は既に大きな花をつけその花は妖艶に咲き誇っている。これをどう解釈すべきか。描きながら考えている。(画)
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引き上げられる人

この人はすでに死んでいるのではないかと思いながら彫っている。天に引き上げられようとしているのだ。もう次のステージに移ったのだ。

これを彫り始めた10年前はそうではなかった。愛する人の死が怖かったので、たとえ死にそうになっても何とかこの世に踏みとどまって欲しいと思っていた。

死の瞬間、エスコートするふたりの天使が現れて、そっと瞼をめくって彼の瞳を覗き込む。そこに月が映っている。

今日は彼の足元の地面を思い切って削った。(K)

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ガジュマルの樹・夏の記憶

以前の作品に長い時を経て再び手を入れるきっかけはその絵により様々だ。でも大抵はこいつはうまくいってない所があるとずっと感じていたのには間違いない。しかしその具体的な修正方法が見えたから手をいれるのかというとそうでもない。その解決策が見えないまま、どうしたらいいか分からない長い待機の時を経て、今なら解決策が見えないまでも何とかなるんじゃないかと思えるようになったので始めるのだ。
どうにかなるし、きっともっとよくなると思えるからだ。(画)
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激しい雨

空を砥石で磨いていると、澄んだ空気を作っているようで面白い。緩やかにねじれた面が山の縁に入る辺りは砥石は届かないので、ヤスリに持ち換えて根気よく作業を続けた。気温22℃。音を立てない静かな雨がトタン屋根をゆっくり流れ落ちる。

無くなってしまうと不安になる人には剥奪はない。無くてはならないものが何なのか、無くしてしまっても気がつかないから、そっと埋まったままにしてあるのだ。優しい雨と激しい雨の両方を知っている。(K)

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老いたレンブラント4

老人はいやだねぇと老人の僕は事あるごとに思うんだけど、さていつから自分は老人になったのかと改めて考えてみた場合、いつ老いを意識したかをよく覚えていない。髪が薄くなったとか顔のシワが増えたとかそんな時だとは思うが。
社会的な意味では、画家になる事を諦めた時があったと思う。理由は数度の試験に落ちた後、遂に応募資格年齢を越えてしまったからだ。つまり老人になってしまったからだ。でも画家になる事と画家である事は違う次元に属している。一生にわたって画家であり続けるかどうかも分からない。
きっと画家として年齢を重ねた末にしか描けない絵というものがあるに違いない。(画)Dscf8094

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耳が遠くなって

耳が遠くなって、トワンは益々可愛らしくなった。耳で得ていた情報は目で補うようになった。山での散歩も付かず離れず、一人で遠くへは行かない。家の中でもそうだ。私たちが見えなくなると探しにやって来る。

ところがここ数日また耳の調子が良くなったようで、呼べば振り向くようになった。耳というのは聞こえるから動くのだ。トワンの大きな耳がよく動いている時はよく聞こえていて、目が澄んでいるとよく見えているということだ。目を覗き込んだり、呼びかけたり、愛しい気持ちが私たちの中へ入って来た。(K)

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絵の効能

絵の教室に毎週通って来る母娘がいる。小学生の低学年の子は絵を描くのが大好きなのだ。その母親が話してくれた。
「この子にはね、イライラしたり怒りっぽかったりそんな気分の悪い時、そんな時にでも手を動かして絵を描けばいい、それでいい絵が完成したら嬉しくてさっきまでの悪い気分なんかどこかへ飛んで行ってしまうでしょ、だからイライラしながらでもいいからとにかく絵を描きなさいと言ってるんです」
なんかその辺の画家に言ってやりたい言葉ではないか、確かに僕もこのままではいい絵になりそうもないと気持ちが負けそうにな時はとにかく手を動かす。それしかないしそれだけの事だ。(画)

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発情する鹿

感情の高ぶりや落ち込みのメカニズムについては脳科学ですっかり解明されているのだろうが、喧嘩は無くならないし鬱病という言葉も巷に溢れている。本当に大事な時にカーッとアドレナリンが分泌されて何も考えずに行動に移せたらいいなと思う。人間だから後ろから撃たれるのが怖い。想像力はいつだってマイナスに働くのだ。体に良いものは美味しいものと決まっていたはずなのだ。いつからか、正しいことは曖昧で、善いことは捻れるようになった。こうなると、誰の言うことも信用できない。それでも好ましいものの匂いを嗅ぎ別けながら鹿は群れから離れて独り歩き出した。(K)

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